2012-01-01から1年間の記事一覧

作文「国際交流について」

「国際交流」というフレーズに、毎日何度も出会う。そこでは決まって、その必要性が訴えられている。一刻もはやく子どものうちから国際交流に加わらなければ日本がたいへんなことになる、というようなことを、有識者とよばれる人々が言い、政府が言い、それ…

ウーゴ・ムラス 《ロイ・リキテンシュタイン》

気づけば自分も表層ばかり見ている。誰とつながるにしても、その人とふれあっている時間の多くはメールやSNSやTwitterが占めている。直接声を聴いたり会って話したりするなんて、人間関係のなかでどのくらいの割合だろうか。 メールもSNSもTwitterも、文字列…

「芸術」の分類的意味に関する考察

「芸術(Art)」ということばのふたつの意味を最初に指摘したのは Morris Weitz *1 であり、それを発展させたのは George Dickie *2 であった。彼らのいう「芸術」のふたつの意味とはすなわち、分類的意味(classificatory sense)と価値的意味(evaluative …

発想の輸出

京都国立近代美術館で開催中の「KATAGAMI Style」へ行った。古くから染物に使われた型紙は、19世紀​後半に他の日本の美術品とともに西洋へ渡り、人々の注目を浴びる​。ジャポニスムが巻き起こるなか、型紙もまた西洋美術の革新に貢​献し、20世紀の近代デザイ…

デイヴィドソンのメタファー解釈論の背景についての考察

「赤ちゃんは春である。」という文がある。これは文字通りにとれば誤りである。辞書で「赤ちゃん」を引いても「春を指す」とは書いていないし、「春」の項には「赤ちゃんの意」とは載っていない。しかし「赤ちゃんは春である」という文に「確かにそうだ」と…

ルネ・マグリット 《恋人たち》

ルネ・マグリットという画家がいる。20世紀を代表する、シュールレアリスムの画家である。物体をありのまま丁寧に描く画風。しかし、描かれているもの同士の関係があまりにも奇妙であり、そこに隠されたものを、考えずにはいられない。 マグリットの作品に「…

画一性

2012.07.08 東大での学会に参加するついでに、森美術館で開催中の「アラブ・​エクスプレス展」へ出かけた。正直興味はなかったが、先輩の薦め​と、教授の「興味のない分野の展覧会も行きなさい。そして、何が​語れるか、模索しなさい」との言葉を受けて、行…